最も高級なる酒の呑み方(蘇軾と Valéry の「酒の歌」による『對のあそび』)

最も高級なる酒の呑み方{古今東西、數あるなかで、私が好一對に撰んだ「酒の歌」



人間如夢、一尊還酹江月。 蘇軾 103601『赤壁懷古』より

「人世、夢の如し。一獻、江月にそそがむ」




「虚無への供物として 美酒いとすこし、海にそそぎぬ」
Jeté, comme offrande au néant, Tout un peu de vin précieux... Paul Valery 187145『 Le Vin perdu 』より




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蘇軾103601『赤壁懷古』

大江東去,浪淘盡、 千古風流人物。
故壘西邊, 人道是、三國周郎赤壁。
亂石穿空,驚濤拍岸, 卷起千堆雪。
江山如畫,一時多少豪傑。
遙想公瑾當年, 小喬初嫁了, 雄姿英發。
羽扇綸巾, 談笑間、 檣櫓灰飛煙滅。
故國神遊, 多情應笑我,早生華髮。
人間如夢,一尊還酹江月。
長江は滔々として東流し、波浪は歴史の英雄を流し去る。
三國志の周瑜が奮闘した赤壁はこゝだと人は云ふ。
亂石は雲を崩し、波濤は岸を裂き、
うづたかき雪を巻き上げるが如き江山の樣は畫のやう、
この景色のなかで幾多の豪傑が鬪爭したことか ―― 
懷へば、その時、周瑜は美人の若妻を娶ったばかり
雄姿りりしく英知あふれ、諸葛孔明と談笑する間に
曹操の大軍は灰と飛び煙と滅んでしまった。
わが故國に遊行するわが多情を自笑すべし、
少年老いやすく、早くも白髪となった我が身を。
人世まさに夢の如し。一獻、また川面の月にそそがん

Paul Valery 187145『 Le Vin perdu 』

J’ai, quelque jour, dans l’Océan,
(mais je ne sais plus sous quels cieux),
Jeté, comme offrande au néant,
Tout un peu de vin précieux...

Qui voulut ta perte, ô liqueur ?
J’obéis peut-être au devin ?
Peut-être au souci de mon cœur,
Songeant au sang, versant le vin ?
Sa transparence accoutumée
Après une rose fumée
Reprit aussi pure la mer...
Perdu ce vin, ivres les ondes !...
J’ai vu bondir dans l’air amer
Les figures les plus profondes...

我、幾日か、海にありき。(だが、何處の空の下かは覺えぬ)。
虚無への供物にとして 美酒いとすこし、海に注ぎぬ。
誰が汝の損失を望んだのか、美酒よ。おそらくは我、神占にしたがひぬ。
おそらくは、わがこころの憂憤を拂はんと、血を捧げんとして酒を注ぎぬ。
その何時に變らぬ海の透明は、薔薇色の煙を立てし後、元の純粹へと戻りぬ。
失はれし酒、ほのかに醉ひし波。我は見し、苦き氣配のなかに躍りあがるものを、
底深きなるものの姿を