思考と空想:1991 ゲイジツ的とゲンジツ的と

2008/0408

nature culture future



ゲイジツ的とゲンジツ的と、たつた一字の相違、
「虚實は皮膜」と近松門左衛門は云ってのけた。
レアリテとレアリスムとにはゲンジツとゲイジツほどの相違がある。
sur なレアルと sous なレアル、レアルの上か下かをめざることによって視点はレアリズムとなり、ゲンジツはゲイジツとなる。



「良心の惡意」また「惡意の良心」といふ事が理解できるだらうか。
これが文學の祕密といふか祕訣ともいふべき精神であり、この亂視の精神によつて文學は宗教以上の宗教的體驗を可能にし、政事以上の政事的現實を生体解剖できるのだ。作り物しか本物らしさを再現できないのさ。ウソだと思ふなら、ドストエフスキイを讀んでごらん。
自然は藝術を模倣する。だが、ゲイジツをゲンジツに再現してみたら、ゲイジツがどんなに出鱈目なゲンジツであるかが解ってしまふだらう。



思想に一貫性を求めてはならぬ。むしろ矛盾する事こそを。
私が散文家ではなく、詩人なのならば、
私がイデオロジストではなく、コスモロジストならば、

體系の完全など一つの破綻で脆くも全壊してしまふ。
矛盾こそが永遠の謎、祕密魅惑の源泉なのだ。



なましいたけがかなしいだけと讀まれた。オレはホンモノだ。


Art of Heart ∈ 思考69空想 ∋ Word of World 199107