ニッポン終末ニュウス 20080401 母の子殺し

 
「おかあさん」 西山拓海

  おかあさんは
  どこでもふわふわ

  ほっぺは ぷにょぷにょ
  ふくらはぎはぽよぽよ
  ふとももは ぽよん
  うでは もちもち
  おなかは 小人さんが
  トランポリンをしたら
  とおくへとんでいくくらい
  はずんでいる

  おかあさんは
  とってもやわらかい
  ぼくがさわったら
  あたたかい 気もちいい
  ベッドになってくれる


入学式心待ちの小4長男、30歳の母親が殺害…八戸
2008年4月1日(火)21:29
 1日午後1時ごろ、青森県八戸市美保野の民家で、この家に住む市立美保野小4年の西山拓海君(9)が寝間着姿で死んでいるのを、祖母が見つけた。 拓海君の母親で無職の未紀容疑者(30)が「寝ているところを電気コードで首を絞めて殺した」と認めたため、八戸署は殺人の疑いで緊急逮捕した。 発表によると、拓海君は2階の子供部屋で、布団の上に倒れていた。未紀容疑者が首を絞めたのは午前9時ごろとみられる。拓海君は、未紀容疑者と祖父母の計4人で暮らしていた。 美保野小の佐鳥幸代教頭によると、拓海君は07年度の在校児童4人では最下級生。新年度は4人が入学する予定で、拓海君は「お兄ちゃんになれる」と、7日の入学式を心待ちにしていたという。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20080401-567-OYT1T00617.html


なんかもう、この國はもうダメだな。「妣の國」の日本で、母親がわが子を殺すなんて事件が頻發するやうになつては、ここまで人の心が狂ひ壞れてしまつては。

それにして、いい詩だなあ。私のやうな人非人でも、母親の事をおもひだした。と云ふより若き母親の感觸に抱かれた。
「たらちね」垂れるほどゆたかな乳房で母の事を形容修飾した『萬葉集』以來、母戀ひ物の數多い日本で、「おかあさん」への幼年から少年にかけての官能と願望とが素晴しい詩を作らせた。掛値なしにこれは傑作の詩だ。

この詩は比喩と揶揄とをみごとに驅使して手本にしたいくらゐだ。
まづは、おかあさんの「やはらかさ」をハ行を中心とした統一感のあるオノマトペで表現して、その味はスヰイトにしてビター、ユウモアがありウイットがあり、對象=母體への愛着と諧謔とが心地よい。つづいて後段では母體=女體への官能と願望とが大胆な比喩をもつて示される。「小人」が「女體」で遊んでゐる/遊んでゐたいといふ(一寸法師につながる)母體といふより女體への官能が示され、「ベッド」のやうな母體=子宮への囘歸願望を示し、母親讚歌によつて締め括られる。
あるいは、この詩ができた頃には、母親との密接な接觸關係はできなくなってゐたのかも知れない。
前段で連發されるオノマトペをはじめとする形容の、女體への皮肉ぶりが憧憬と同時に反撥(「とほくにとんでいく」で明らかに示されるやうに)を感じさせ、幼年から少年への心理成長=反抗期の喪失感がこの詩を作らせたのではないだらうか。 ‥‥

たらちねの母を別れてまこと我れ旅の假廬に安く寢むかも
 
『萬葉集』防人歌

やすらかなれ、とはとても云ふ氣になれぬ。悲しいだけ、やるかたもなし。



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