思考と空想:080311 平城宮址にて

 
奈良にもいきなり春が來た。暖波襲來と云った感じで春爛漫の一日となりさう、陰氣に部屋に引き籠ってゐるのも勿體ないやうなので、cyclingWalk に出掛ける事にする。
春日大社、東大寺、薬師寺、唐招提寺、 ‥‥ どこに行ってもいいのだが、最近マスコット問題で話題沸騰した「遷都1300年記念」祭の現地は如何と平城京址の偵察にでも行ってみる事にする。
  元興寺極樂坊の甍のうつくしさ 


奈良町をわざと迷路のやうに走って(元興寺にちょっと立ち寄って)、猿澤の池に出る。平日ながら、天氣に誘はれた觀光客の姿が多い。その數に紛れて、三条通りを下り、アアケイドに入って、近鉄驛前に出る。通過して來た所には、いまだ何等の異常なし。信号を待つ間、噴水上の近代作の行基銅像を眺めて、高徳「菩薩」と讚へられた行基を感じさせるツラじゃねえぞと視線で唾棄する。

憧れ?の奈良女子大の塀に沿って走り、佐保川を渡り、東大寺の轉害門に通じてゐる一条通り?に出て右折、そのまゝ進めば平城「宮」に至るのだが、今はバイパスの二四号線が遮斷してゐる。どっちに行っても囘り道の感じになるので、不退寺のはうへ行ってみる。不退寺は、かの在原業平ゆかりの寺なので、王朝的雅の風情を期待して行ったのだが、ま、期待はづれであった。その不退寺を通り過ぎ、JR京都線と併走して、宇和那邊古墳の所で、鐵路とバイパスを横斷、池を廻らした古墳に沿った遊歩道を佐紀のはうへのんびりと走っていく。
この邊りから眺める奈良の市街は、平城宮址の空地越しになるせゐか、或種蜃氣樓めいた感じで見える。今日は花粉霞とで云ふのか、そんな感じで霞んで、しかも陽が當って照り輝いてゐるからなほさら、過去と現代が重層して幻想的なほどに歴史の時空といふものを感じさせる。空地には(私も子供時代熱中したゴム飛行機を飛ばしてゐる少年がゐたりして)私の個人的な感傷も加はる。
宮址にもそこそこの人出がある。大極殿の基壇には、寄り添ふ若き戀人、赤子を遊ばせてゐる母親、老夫婦の佇む姿などがあつて、その背後の光景は、コンクリイトの建物の亂立、そのまた背後には春日山や高圓山の姿。亡國憂情を懷いて大和の地に來た者に、ものおもふ恰好の場所、で、ものおもふ事にした。






私は私なりの「大和=日本」の記念事業を企画してかうして實行してゐるわけだが、飛鳥から奈良に來たその過程が偶然、今度の「平城京遷都一三〇〇年」に遭遇したのであつた。
都市の中心部となる地域を空地として遺さなければならぬ現代の奈良市はこの歴史的廢墟のために不利益を蒙ったかのやうにも思はれる。
廢墟の事など何も思はず始まった近代都市化の過程は、鐵道に廢墟を過ぎらせ、國道を走らせた。
詳しい事は


Art of Heart ∈ 思考69空想 ∋ Word of World